住職のおはなし

Column

龍泉寺の看板犬、アーサー

2022.07.21

龍泉寺にはかつてアーサーという看板犬がいました。
私が龍泉寺にペットのお墓を作ったきっかけは、このアーサーの存在です。

私たち新婚の夫婦の中に縁あって入ってきた犬、それがラブラドールレトリバーのアーサー。
生まれて数ヶ月の子犬の頃から可愛がっているうち、いつの間にか夫婦に多大な癒やしを与えてくれる存在になっていきました。

穏やかかつ元気いっぱいのアーサーとは、どこに行くにもいつも一緒。
小さい頃から小さな犬と一緒に訓練所で遊んでいたせいか自分自身のことも小さな犬であると勘違いをしており、いつも散歩中の犬に「あそぼ!」と絡んでは吠えられているような犬でした。
実際は大型犬なので、絡まれた小型犬からしたら相当怖かったでしょう……。

そして、夫婦に多大な癒やしを与える存在のアーサーは、それに加え子供を守ってくれる守護犬にもなりました。

もちろん、お檀家さんとも仲良しのアーサーです。いつも尻尾を振って「ようこそ、いらっしゃい」と歓迎していました。

家族からもお檀家さんからも愛される看板犬のアーサー。
時が経ちアーサーも歳を重ね、私はいつしか、アーサーが老いて死んでいくときのことが頭をよぎりました。
そして、私はそのときに初めてペットのお墓を作ろうと考えたのです。

ペットのお墓は10年かけて作りました。

そして、偶然にも一番最初に入ったのはアーサーでした。13歳と8ヶ月。
お墓ができてすぐのことでした。

アーサー相手に、人生で初めてのペットへのお経。涙でなかなかお経を読むことができませんでした。
このとき、私は「ペットロス」という言葉の意味を、身をもって理解したのです。

言葉では言い表すことのできない悲しい気持ち。
アーサーはうちにきてから死ぬときまで、無償の愛で家族を包んでくれました。
アーサーが亡くなってから7年ほど経っていますが、ペットロスからすっかり立ち直れたかというとそんなことはありません。

 

今は龍泉寺にはペットはいませんが、お檀家さんとよくペットの話をします。

特に葬儀の際にはお経の前に15分ほど、亡くなったペットのお話を飼い主様からうかがっています。
お話をうかがうことで、飼い主様のお気持ちに少しでも寄り添えればと思っております。

ペットロスから完全に解放されることはないかもしれません。
ですが、飼い主様とご一緒にお話をして少しでも落ち着いてからご供養することで、お気持ちの整理がつく手助けができればと心がけております。